「Variations on a Silence ──リサイクル工場の現代芸術」をきっかけに、私は“耳が聴こえる”ようになりました。もともと健聴者ですが、リサイクル工場で生まれ、設置された作品から、それまで気に留めていなかった「音」、雑音としか認識していなかった「音」の楽しみ方を教えてもらい、音楽以外の「音」の世界の面白さにのめり込んでいきました。
今回、東京都現代美術館で開催されているクリスチャン・マークレー展では、16年ぶりに当時の作品やそのほかの作品を鑑賞。16年前はリサイクル工場で視覚化された音の世界を楽しみましたが、今回、美術館という場に設置された作品はちょっとおめかししたかのような印象で、場の違いからか作品がくすぐったく感じられました。その他の作品、視覚化された感情も興味深く鑑賞。クリスチャン・マークレーの感覚と自分の抱く喜怒哀楽のイメージとを対比、違いを楽しみつつ、彼独自の視点に触れ、改めて脱帽。ありそうでなかった着眼点や細部に至る表現へのこだわり、センスに圧倒されました。
今回の展示では、自分の気がかりへのメッセージや制作ヒントも受け取ることができ、それらをこれから活用、どんな変化が生まれるのか楽しみです。クリスチャン・マークレーの作品をはじめ、他芸術作品の鑑賞を通じて、自分の中にまだ眠る力を見出し、新たなるコミュニケーションの創造を楽しみたいと思います。
クリスチャン・マークレーの作品は、埋もれた感覚を発掘したい人、忘れかけた感覚を取り戻したい人、新たな発想・着眼点のヒントが欲しい人にぜひおすすめしたいですね。彼の作品に触れることで、自分ひとりでは得られない気づきや発見をたくさん得られることでしょう。
「Variations on a Silence──リサイクル工場の現代芸術」を企画したSETENVの入江さん、井上さん、ボランティアスタッフを取りまとめてくださった光岡さんには本当に貴重な体験と素敵な出会いを与えていただけたことに感謝しています。展示作品との出会いは、私の眠っていた感覚を目覚めさせるもので、まさに開眼のきっかけでした。また一緒に展示に関わったボランティア仲間たちからもいい刺激と学びをたくさんいただけました。今振り返っても、濃度の濃い非常に充実した時で、刺激に満ち溢れた素晴らしい時間として、思い出深く記憶に残っています。今回、こうして振り返りの機会を与えていただけたことにも感謝しています。本当にどうもありがとうございました。